本居宣長(下)の2

宗教・心理・社会・思想・哲学・教育
著者小林秀雄

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スメルジャコフ [2008年12月17日(水)]

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生死の経験と言っても、日常生活のうちに埋没している限り、
生活の雑多な目的なり動機なりで混濁して、それと見分けが
つかぬ状となっているのが普通だろう。それが、神々との、
真っ正直な関わり合いという形式を取り、言わば、混濁を
すっかり洗い落して、自立した姿で浮び上がって来るのに、
宣長は着目し、古学者として、素早く、その像を捕えたのである。
其処に、彼は、先に言ったように、人々が、その限りない弱さを、
神々の眼に曝すのを見たわけだが、そういう、何一つ隠しも飾りも
出来ない状態に堪えている情(こころ)の、退っ引きならぬ動きを、
誰でも持って来て生まれて来た情の、有りの儘の現れと解して、
何の差し支えがあろうか。とすれば、人々が、めいめいの天与の
「まごころ」を持ち寄り、共同生活の上での秩序附け、これを
思想の上で維持しようが為に、神々について真剣に語り続けた、
そのうちで、残るものが残ったのが「神世七代」の物語に他ならぬ、
そういうことになるのではないか。 (P251)


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すみません、取り乱しました。